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韓国の歴史

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2009年3月18日 (水)

チェクポルレ⑪ コーヒーブレイク

☆ 雨宮処凛『怒りのソウル』(金曜日)

光州シリーズは少なくともあと1回残っているが,合い間に読んだ本を取り上げる。雨宮処凛の『怒りのソウル』だ。

円高・ウォン安で日本人観光客が韓国に押し寄せているようだ。一昨年ソウルにいた頃のちょうど2倍のレートだから,下宿していたコシテル(コシウォン=考試院+ホテル)の家賃も当時は高いなあと思ったが,今ならかなり安く感じるだろう。

この本で紹介されているのは,グルメ・エステ・ショッピングなどで訪れる韓国の顔とはまるで違っていて,生身の人間とその生活を見せてくれる。初めにろうそく集会(촛불집회)も,それを鎮圧する撒水車(살수차)の水大砲(물대포)も登場する。ムルデポの発音は水鉄砲と似ているが,そんなかわいらしい玩具ではない。

さて本文は,非正規雇用,ニート.スクォッティングアーティスト,研究者たちのコミューン,兵役拒否者など生活の匂いがぷんぷんする現場を訪れ,インタビューした報告である。このように韓国人のさまざまな姿を見ることができるのは,何よりも雨宮処凛の嗅覚の鋭さによるわけだが,通訳などのスタッフの誠実な仕事振りが寄与していることも伝わってくる。

日本のマスコミには韓国に関する情報が溢れているように見えるが,非常に偏りがあるという異常さを考えるとき,この本はその欲求不満を少しは解消してくれる。そういう意味で一読する値打ちはあるし,これを手がかりにさらに深入りするのもいいだろう。一つだけ気になるとしたら,変貌の激しい韓国社会のことだから,この手の本の賞味期限ということになるが,余計な心配はやめておこう。

☆ 時事ジャーナル事態(시사저널 사태)

雨宮も簡単に触れている事件を,少し見ておこう。「時事ジャーナル(시사저널)」の記者が,サムソングループの会長・李健煕(이건희 イ・ゴンヒ/イゴニ)に次ぐ№2の実力者であるイ・ハクス(이학수=李鶴洙)副会長に関する記事を掲載しようとした。それに対して同誌の社長が印刷直前に記事を独断で削除した。編集権の独立を主張してストを打ち,やがて記者たちは退社して「時事イン(시사IN)」を創刊することになる。

このような報道に対する露骨な介入は,もちろんとてつもなく強大な力を持つサムソンという組織の体質によるわけだ。それをサムソン共和国とかファシズムと表現する人もいるぐらいだから。このように書くと,日本人はともすれば韓国の民主主義の未成熟さという結論に短絡させたがるかも知れない。裏返せば,日本が民主主義の成熟した社会という根拠のない自信なんだろう。根拠がないことは,以下の歴史を見ればよく分かるはず。

☆ 日本における出版や報道に関する事件

1960年  中央公論に掲載された深沢七郎『風流夢譚(ふうりゅうゆめものがたり)』に右翼が抗議し,翌年大日本愛国党の元党員(17歳の少年)が中央公論社社長の嶋仲鵬二宅に押しかけ,家政婦を刺殺し夫人が重傷を負った「嶋中事件」。編集長が退社,社長名義で新聞に「お詫び」を掲載。深沢は1965年まで放浪生活。

1961年  大江健三郎が,前年の浅沼稲次郎刺殺犯である山口二矢(おとや)をモデルとして「文學界」に発表した『セブンティーン』第2部『政治少年死す』に右翼が激怒。文藝春秋新社は公式に謝罪し,その作品は現在まで公刊されていない。

1969年  藤原弘達による創価学会・公明党を批判した『創価学会を斬る』の出版予告に対して,公明党や田中角栄が圧力を加え,出版後も書店は創価学会系列の出版関係者や学会員などからの脅迫や嫌がらせを受けた「言論出版妨害」。当初,マスコミはこの問題を取り上げなかった。

1983年  桐山襲(きりやまかさね)の『パルチザン伝説』が『文藝』に掲載される。昭和天皇へのテロ計画を描いたものだったから,『週刊新潮』が暗に桐山の暗殺を煽動。右翼の要求で河出書房新社は単行本化を中止。その後,作品社から出版される。

これらは昔の話で,現在は言論の自由も保障されているし,マスコミも充分に機能していると信じる能天気さを持ちたいとは思う。しかし根が疑り深い性格だから,より陰湿になり,より自主規制が深く進行しているだけの話ではないのかと思ってしまう。民主主義の度合いは日本も韓国もちょぼちょぼと思って間違いないだろう。もちろん米国が手本になると言うつもりは毛頭ない。

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