韓国映画と音楽
☆ ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア(Knockin' On Heaven's Door)
映画音楽そのものではなく,映画の中で流れていた曲が非常に印象的であったという経験が何回かある。断トツはサム・ペキンパー監督の『ビリー・ザ・キッド21才の生涯(Pat Garrett and Billy the Kid)』の1シーン。ビリーを追跡するパットに従った老保安官が,銃撃戦で撃たれる。舟を作って町を出て行くのが夢だった彼が川のほとりで腰を下ろし,老妻がじっと見守る。
♪ バッジを外してくれ/もう使えない/目の前が暗くなった/天国のドアが近い/天国のドアをノックする
ガンズ・アンド・ローゼズによるカバーの方が有名かもしれないが,この映画に出演もしているボブ・ディランの名曲だ。映画の場面と曲が溶け合った幸福な例の1つと言えるだろう。
☆ 韓国映画で心に残った音楽
『カンナさん大成功です!』の金亞中による『マリア』については『外貌至上主義』で,またキム・ユナによる『北の宿から』のギター弾き語りの素晴らしさについては『ユゴ(大統領有故)②』で触れた。あと幾つかを挙げてみよう。
キム・ギドク監督の『春夏秋冬そして春』で,仏像を山頂に運び上げる場面で流れていたのが,金英姙(김영임 キム・ヨンイム)が歌う『チョンソンアリラン(정선=旌善아리랑 )』だ。この迫力をもう一度聞きたくて数年前に韓国でCDショップを探したが,『金英姙民謡大全集』にはどういうわけかこれが入っていなかった。その後韓国留学中に,あまり期待せずに地下鉄安國駅にある店をのぞいたとき,アリランばかりを集めた彼女のアルバムに入っているのを見つけた。
もう1つは,イ・ウンジュ(이은주)が『スカーレットレター(주홍글씨)』のなかで,ジャズシンガー役で歌う『夢の中で抱きしめて(Only When I Sleep)』で,このシーンは様になっていた。ザ・コアーズ(The Corrs)のヒット曲だが,それとはまた違った雰囲気で,イ・ウンジュが珍しく役を楽しんでいるように見えた。映画そのものは頂けなかったが,これが彼女の最後の作品となったから,余計に印象に残るのかもしれない。それにしても,イ・ウンジュの持ち味を充分生かした作品がなく,薄幸な役回りばかりだったのはもったいなかった気がする。
☆ 小道具として
実際に歌う場面が出てくるとか,バックに流れるというほどでなくて,その時代を象徴する形で使われていることもある。
キム・グァンソク(김광석=金光石)の『二等兵の手紙(이등병의 편지)』。この曲は,『JSA』でも使われているし,『ラブストーリー(클래식)』でもまさに入隊の場面で流れていた。
また,韓国ロックの草分けであるシン・ジュンヒョン(신중현=申重鉉)の『美人(미인 ミイン)』の場合は,確かソル・ギョングの『オアシス』だったと思うが,花札(화투=花鬪)をしながら鼻歌を口ずさんでいる場面にはにんまりした。なお,シン・ジュンヒョン&ヨプチョンドゥル(엽전들=葉錢たち)をヨプ・チョンドゥルと表記しているものがあるのはご愛嬌だ。
♪ 한 번 보고 두 번 보고 자꾸만 보고 싶네(ハン ボン ポゴ トゥ ボン ポゴ チャックマン ポゴ シムネ) 1度見て 2度見て もう何度も見たい
♪ 모두 사랑하네 나도 사랑하네(モドゥ サランハネ ナド サランハネ) 誰もが皆夢中さ 僕も夢中さ
シン・ジュンヒョンに関しては,『韓国語ジャーナル第17号』(2006.7)でイム・ジュヒ(임주희=林周禧)がインタビューしている。この中で,朴正煕大統領時代の活動禁止など生々しい証言を聞くことができる。
韓国を色々な面から知りたい人間にとっては,こういう角度からも韓国映画を楽しめる。


























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