チェクポルレ⑤ 金素雲-続報-
☆ エッセイを読む
エッセイというジャンルの中で,苦手なものがある。親友(日本人)が,법정(ポプチョン=法頂)の『무소유(無所有)』が良いと言ったので,韓国へ行ったとき早速買って読み始めたが,数ページで投げ出してしまった。静謐なものが性に合わないのかもしれない。
それに比べると,金素雲の『こころの壁』『霧が晴れる日』は面白い。それだけきな臭いということか。以前に読んだときよりも濃く印象に残る。この2冊は,以前に出版されたエッセイを編集したもののようだが,専門家ではないから原典に当たることはせずに,この2冊から抜粋していくことになる(次回から?)。
それにしても,なかなか本題に入れず外堀を埋めている感じなのは,それだけ一筋縄ではいかない相手だということになる。
☆ 大韓民国文化勲章(문화훈장)
韓国の文化勲章は5等級に分けられていて,それぞれ金冠(금관)・銀冠(은관)・寶【宝】冠(보관)・玉冠(옥관)・花冠(화관)と称される。
最近,ペ・ヨンジュン(배용준=裵勇俊)が受賞して話題になっているのは花冠であり,サムルノリのチャンゴ奏者であるキム・ドクス(김덕수=金德洙)が銀冠,ファッションデザイナーのアンドレ・キムが宝冠であった。
過去の受賞者としては,イム・グォンテク監督とシン・サンオク監督が金冠,パク・チャヌク監督とイ・チャンドン(이창동=李滄東)監督が寶冠,カンヌ映画祭主演女優賞のチョン・ドヨン(전도연=全度硏)が玉冠を受賞しているそうだ。
このうちイム・グォンテク,シン・サンオク,パク・チャヌクには既に触れているが,イ・チャンドンはどういうわけかこのブログ初登場。『グリーンフィッシュ(초록 물고기)』『ペパーミント・キャンディー(박하사탕)』『オアシス(오아시스)』『シークレット・サンシャイン(밀양=密陽)』等の秀作を撮っている。この中では,『密陽』が一番つまらない。というか,チョン・ドヨンの熱演が却って鼻につく。閑話休題。
金素雲も1980年に銀冠文化勲章を受章している(年譜で1974年としているものがある)。今回のペ・ヨンジュンの受賞報道で金素雲に触れているものは見当たらなかった。そんなものか。
☆ 親日派(친일파 チニルパ)
2005年に民族問題研究所が発表した「親日人名辞典」収録予定者3090名の文化芸術の項目に,金素雲が含まれている。ほかにも『故郷の春(고향의 봄)』や『鳳仙花(봉숭아)』等の作曲家として知られている洪蘭坡(홍난파 ホン・ナンパ)もリストに挙がっている。その後2008年にリストは更新されて4776名になっている。
民族問題研究所による「親日派」の規定は次の通り。
「乙巳条約(※)前後から1945年8月15日の解放に至るまで,日本帝国主義の国権侵奪・植民統治・侵略戦争に積極的に協力することで,我が民族あるいは他民族に身体的・物理的・精神的に即ち間接的に被害を与えた者」
※ 1905年日本が朝鮮の外交権を奪い,保護国とした。
幼い頃に,職業柄日本人との接触が多かった父親が親日派として同胞に暗殺された金素雲としては,「てやんでぇ」と啖呵をきるところだろう。実際,次のように記している。
--日本こそは倶(とも)に天を戴かざるの仇敵でなければならなかった。
--間接には父を喪わしめ・・・直接には国を滅ぼしたその憎むべき相手は他ならぬ日本であった。
--私の日本についての理解や関心が,そんじょそこいらの御都合のよい〈親日屋〉のそれと,同格に扱われては浮ばれない・・・。
存命であれば,このような安易なレッテル貼りは腸が煮えくり返る思い・無念さ・悲しみ等の入り混じった気持ちになったのではなかろうか。
ある小学生が,金素雲の作品が教科書に掲載されているのはおかしいのではないかという主旨の投書をしている。しかもその投稿本文では,「キム・ソウォン(김소원)」となっている。韓国での評価が及び腰である点や,日本での知名度とのギャップの大きさなど考えさせられる点は多い。
「親日派」の問題は,韓国人が解決するしかないが,未だにこんなことで揉めているのかとせせら笑うわけにはいかないし,これを対岸の火事で済ませることもできない。日本における「戦争責任」の問題は,それどころか何も解決しないままの宙ぶらりんの印象が強いのだから。


























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