韓国映画ベスト10 その後Ⅲ
☆ 『公共の敵(공공의 적)』
監督:カン・ウソク(강우석=康祐碩)
出演:ソル・ギョング(설경구=薛景求),カン・シニル(강신일),ユ・ヘジン(유해진)
このシリーズは3作あるが,続編に当たるのは『公共の敵2』ではなく,『公共の敵1-1』だそうだ。いずれにせよどういうわけか今まで食指が動かず,3作とも見ていなかった。
同じ監督・主演の『シルミド(실미도)』は,ある程度期待して見たがつまらなかった。逆にそれほど期待していなかったこの『公共の敵』は面白かった。『シルミド』がつまらなかった一因ははっきりしている。アン・ソンギ(안성기=安聖基)が好きでないから。だから『太白山脈』も『光州5・18』も,イマイチだった一因は同じだ。重厚な演技なんてクソ食らえだ。まあ,プロの評論家ではないから,個人的好き嫌いが露骨に出るのは避けられない。--正確には,避けようとしない。
さて,主人公カン・チョルジュン(강철중)は,アジア大会のボクシングで銀メダルを取り,特別採用で警査(경사)となるが,無能力なために,昇進するどころか逆に警長(경장)→巡警(순경)と降級(강등=降等)していく。そして,雨の日の張り込み中にポンチョを着た男とぶつかり,争ってナイフで切りつけられる。そこから,殺人犯との戦いが始まる。
カン・チョルジュンが名乗るとき「江東署強力班カン刑事」となるが,これは有名な早口言葉「醤油工場の工場長はカン(姜?)工場長で,味噌工場の工場長はコン(孔?)工場長だ。(강장 공장 공장장은 강 공장장이고, 된장 공장 공장장은 공 공장장이다.)」を連想させる。
また,彼が切る啖呵は「金がなけりゃブン殴り,機嫌が悪けりゃブン殴り--殴った奴らを並べると,練兵場2周分だ」となる。日本語字幕はこれだけだが,実際にはもっと長ったらしい。(형이 돈이 없다고 해서 패고 말 안듣는다고 해서 패고 어떤 새끼는 얼굴이 기분이 나뻐. 그래서 패고 그렇게 형한테 맞은 애들이 4열종대 앉아번호로 연병장 두바퀴다.)
こういったコミカルさもあるかと思えば,同僚刑事が突然鄭玄宗の詩『空に噛みつけば』をつぶやく。
空に噛みつけば 雨が降る/雨に噛みつけば わが身が濡れる・・・
(하늘을 깨물었더니 비가 내리더라/비를 깨물었더니 내가 젖더라.)
こういうところに何ともいえない味を感じる。
この殺人犯は,以前はサイコパスと表現されていたが,現在は反社会性人格障害(APD)という名称になっているようだ。その本筋の殺人事件の解決に関しては飛びぬけて斬新な部分はない。
しかしさりげなく流れる幾つかのシーンは,個人的には堪らなくいい。例えば,露天商の若者とのやり取り(バリエーションまである)・交通違反取締りをカネをつかませて逃れようとするアジュンマ・開店資金の借金を返せない店舗を子分たちがめちゃめちゃにする場面・そしてこれを見物する群集など。さらに,警察に対する庶民の複雑な感情。
このような庶民の生活が描かれていると,とたんにうれしくなる。そして,殺人事件であれ恋愛であれ,日常と非日常が交差してこそ映画の醍醐味があると思える。それに対して,成功した創業者のバカ息子がろくろく仕事もせずに高級車を乗り回して,三角関係だの四角関係にうつつを抜かしているようなドラマにはうんざりする。非日常てんこ盛りに魅力を感じる人間がいてこその「韓流」なんだろうけれど。
最後に一言。カン・チョルジュンが元ボクシング選手という設定の割には,乱闘の場面でのパンチの打ち方に腰が入っていない。ひょっとすると,ソル・ギョングは運動神経があまり優れていないのではなかろうか。


























最近のコメント